鶏スープからいただきますを思うーどんな部位でも食べる中国人の食習慣

中国人について、こんな言い方を聞いたことがあるのでは?「4本足のものは机以外、飛ぶものは飛行機以外なんでも食べる」。

これが本当かどうかは分かりませんが、食材の種類が多いことは確か。それに加えて最近思うのは、素材そのものを徹底的に食べ尽くす習慣が強いということです。

たとえば鶏ですが、文字通り、頭の先から足の先まで食べ尽くします。

具体的には、日本では食べる機会のないトサカを含めた頭部や首、足の先(中国語では鸡爪)も割と日常的に食べるのです。

妻の実家では、鶏の丸煮込みが夕食のメニューとしてよく出ます。鶏の体全体が適当な大きさに切られて、スープの中に煮込まれています。箸でつまみ上げたものが、思わず頭部だったりすると目が合った気がしてーそんなわけはないのですがーいまだにドキッとすることも。

「生きていた動物をいただいている」という当たり前だけれども、普段は意識しないことが、ふと頭をよぎります。

この鶏スープには、細かく言えば睾丸や卵巣もあります。腸も中身をきれいに洗われて煮込まれています。毛こそ抜かれているものの、皮や爪は付いたままです。

慣れていないとグロテスクに感じるため、日本人からはゲテモノ食いのようにネガティブなイメージも持たれそうですが、物は言いよう。残す部分や廃棄する箇所がないわけですから、今風にいえばかなり「エコ」で「地球環境にやさしく」「SDGs」とも思えます。

同じようにアヒルも丸煮込みされたものをよく食べます。たまにハトやガチョウもいただきます。

どれも全体から出汁が出るので、調味料は塩と生姜くらいだけで十分美味しいスープが完成。それをご飯にかけてお茶漬け風にしても美味しい。

豚も基本的にはそのほとんどを食べるようです。

サイズ的な問題で一頭丸ごとスープに、というわけにはいきませんが、スーパーや市場に行くと豚足や頭部はふつうに売られています。日本ではほとんど見ることがない「豚の舌(豚タン?)」や「豚の胃袋」もあります。

市場では、豚の首から上がどさっと無造作に置かれていることも。いまだに瞬間的にギョッと反応してしまいます。

殺生した動物を余すところなくいただく、という考えがジビエにはあると聞いたことがありますが、それをまさに現在進行形で実行しているのが中国人なのではと感じます。

パック詰めされてきれいに並んでいる肉類に慣れていると、鶏肉がもともと生きた鶏だったことに思いが至ることはほぼありません。中国では日常的にそんなシーンに出会う。そのせいか「いただきます」という日本語のもつオリジナルの意味を、日本にいたとき以上にたびたび思い出します。

スーパーに並ぶいろんな豚肉。右から豚の耳、豚の舌、豚の胃袋。金額は500gあたりの人民元価格

スーパーでは鶏肉が丸ごと一匹販売されていることも多い(一番左はアヒル)

鶏が丸ごと一匹入って煮込まれたスープ。トサカが見えます

こちらはアヒルのスープ

 

kammy

約20年近く中国・中国人と関わっている中国通。中国や中国人のことが好きで、その面白さを伝えるべくブログを書いています。妻は中国人。